【初心者向け】空調に使われる湿度センサーとは?種類・設置場所・制御の仕組みを徹底解説

オフィスビルや大型商業施設では、「温度」と同じくらい重要なのが「湿度管理」です。快適な空間を保ち、カビや静電気の発生を防ぐためには、湿度センサーが欠かせません。
この記事では、日本のビル空調設備で一般的に使用されている湿度センサーの種類や原理、設置場所、BEMSなどの自動制御との連携について、初心者の方にもわかりやすく解説します。
湿度センサーとは?空調における役割
湿度センサー(Humidity Sensor)は、空気中の水蒸気量を検出して電気信号に変換する装置です。空調設備ではこのデータをもとに、加湿や除湿を自動的に制御し、室内の快適性を保ちます。
- 湿度が高い場合に除湿運転を行う
- 乾燥時に加湿器を作動させる
このように湿度センサーは、室内環境の安定化と省エネルギー運転の両立に大きく貢献しています。
空調設備で使用される湿度センサーの種類と原理
日本国内のオフィスビルや商業施設でよく使用される湿度センサーには、以下の2種類があります。
1. 静電容量式(キャパシタンス式)

最も一般的に使用されているタイプです。センサー内部の絶縁膜(ポリマー)が湿気を吸収すると静電容量が変化し、その変化をもとに湿度を検出します。
※静電容量とは、電気をため込むことができる量のこと。
- 高精度で応答が速い
- 温度補償が容易で空調制御に適している
- 長寿命でメンテナンス性が高い
室内・還気ダクトのどちらにも使用できる汎用性の高いセンサーです。
2. 抵抗式(インピーダンス式)

湿度に応じてセンサー素子の電気抵抗が変化する原理を利用しています。
- 構造がシンプルでコストが低い
- 応答速度は静電容量式よりやや遅い
- 長期使用時には定期的な校正が必要な場合がある
簡易型や温湿度一体型センサーで広く採用されています。
上記2種類とも水分を感湿材が吸収し、それによって静電容量または抵抗が変化するという、電気の特性を活用して湿度を測定しています。
補足. 露点温度センサー(蒸気式加湿時)
蒸気式加湿器を搭載した空調機では、給気ダクトに露点温度センサーを設置することがあります。
蒸気加湿は絶対温度を下げずに加湿を行うことができるというメリットがありますが、過剰加湿による結露が発生しやすいというデメリットがあり、これを防ぐために露点温度センサーを使用します。
- 温度センサーと湿度センサーが1つにまとまっている
- 温度と湿度から露点温度を算出する
- 蒸気式加湿の過剰加湿防止に用いられる
湿度センサーの設置場所とその目的
湿度センサーは、設置場所によって目的や構造が異なります。ビル空調では主に以下の3カ所で使用されます。

設置場所 | 主な目的 | 特徴 |
---|---|---|
室内 | 快適性を維持するための湿度検出 | 人が感じる湿度を重視し、デザイン性の高い壁面設置タイプが多い。 |
還気ダクト | 室内全体の平均湿度を検出 | 複数の部屋の湿度を一括で監視できる。 室内設置に比べて、制御応答性が悪い。 |
給気ダクト | 露点温度を計測 (蒸気式加湿時) | 給気ダクトの結露、過加湿の防止。 |
室内・還気・給気の情報を組み合わせて制御することで、より正確で安定した湿度管理が可能になります。
湿度センサーと空調制御(BEMS・HVAC)の連携
湿度センサーの測定データは、中央監視装置やBEMS(Building Energy Management System)に送られ、空調機(AHU・VAVなど)の制御に活用されます。
主な制御内容
- 加湿器・除湿機の運転制御
- 冷温水コイルのバルブ開度制御
- 除湿運転による過冷却時の、再熱運転による湿度バランス調整
このような制御により、エネルギーを無駄にせず快適な室内環境を維持することができます。
まとめ:湿度センサーは快適で省エネな空調制御の要
湿度センサーは、オフィスビルや商業施設の空調システムを支える重要なデバイスです。快適な湿度を維持しながら、省エネルギー運転を実現するための基盤となります。
- 空調用には「静電容量式」が主流である
- 設置場所によって目的と構造が異なる
- BEMSやHVACシステムと連携し、自動で湿度を最適化する
これらのポイントを理解しておくことで、空調システムの仕組みをより深く理解でき、ビル管理やエネルギー効率の向上にも役立ちます。
関連記事では「加湿器の種類」についても解説しています。
併せてご覧ください。
