【空調の省エネ対策】外気冷房制御とは?仕組み・効果・導入時の注意点を紹介!

カーボンニュートラルの推進やエネルギーコストの上昇を背景に、空調設備の省エネルギー化が強く求められています。中でも注目されているのが、「外気冷房制御」です。
本記事では、オフィスビル、病院、工場、研究施設などで広く活用されている外気冷房制御の仕組み、導入効果、制御方法、注意点について、わかりやすくご紹介します。
外気冷房制御とは?
外気冷房制御とは、屋外の空気(外気)を室内より冷たい場合に空調機に取り入れ、冷房エネルギーを節約する制御方式です。
外気を冷房エネルギーとして用いるため、熱源の稼働を抑えることができ、電力使用量の削減や機器の負荷低減につながります。

季節に関わらず室内が暑いときには、外の涼しい空気を取り入れるために、窓を開けるということは、皆さん経験したことがあると思います。
商業ビルや工場などの大きな建物では、一つ一つの窓を開けるだけでも大変な労力となってしまいますし、防犯の問題もあります。
そのため、空調機を用いて自動でやってしまおうというのが、外気冷房制御です。
外気冷房制御の実行条件
まず、外気冷房制御がどのような時に実行されるか、その条件を以下に説明します。
外気の温湿度が適正な範囲に収まっている
まず、外気冷房制御を行うにあたって最も大切なことが、外気の条件です。
外気を室内に取り入れることで、冷房をしたいのに、外気の温度や湿度が高すぎたり、低すぎたりしたら、快適な室内環境を維持することはできません。
人間が快適に感じる(不快に感じない)空気というのは、どのくらいの温度と湿度の範囲にあるのかということが決まっています。
したがって外気を測定できるセンサで、外気が快適な空気条件なのかどうかを判定し、外気冷房制御を実行しています。
室内に冷房要求がある
外気冷房制御というくらいですから、室内を冷房したいという要求が必要になります。
要求という言葉を使いましたが、実際には室内温度計測値と設定値の差のことです。
室内温度が設定値よりも高い(=冷房要求がある)時に、外気冷房は有効になります。
冷房運転モード時(2管式空調機のみ)
2管式空調機とは、冷水と温水のどちらか一方のみを流すことができる空調機のことで、冷房運転モードと暖房運転モードを切り替えることで、運用しています。
一方4管式、6管式空調機は冷水と温水どちらも流すことができます。
そのため、冷房運転モードと暖房運転モードの切り替えが必要ありません。
したがって、2管式空調機では、冷房運転モード時のみ外気冷房制御を実行しています。
これらの条件がすべて満たされた場合、自動的に外気冷房が有効化され、外気の取り入れ量が増加します。
逆に、条件を外れた場合は、外気導入を制限して通常の空調運転に戻します。
外気冷房制御に必要な主な設備構成
では外気冷房制御の導入には、どのような設備が必要なのでしょうか。
外気・還気・排気ダンパ
そもそも外気冷房制御とは、何を制御対象としているのかというと、それは外気ダンパです。
外気冷房制御実行中は、室内の冷房要求に応じて、外気ダンパの開度を調整しています。(冷房要求が高いときは外気ダンパ高開度、冷房要求が低いときは外気ダンパ低開度)
しかし外気ダンパの開度だけが変化すると、室内の風量バランスが崩れてしまいます。
そこで一般的には、外気ダンパと排気ダンパは同じ開度、外気ダンパと還気ダンパは逆の開度(例:外気ダンパ開度20%なら還気ダンパ80%)にすることで、風量バランスを保っています。
したがって、外気冷房制御には外気ダンパ・還気ダンパ・排気ダンパが必要になります。
外気・室内計測用 温湿度センサ
上記の「外気冷房制御の実行条件」でも登場しましたが、外気条件を判定するための外気計測用温湿度センサが必要です。
外気条件によって、外気冷房制御を実行するかどうかを判断しています。
また冷房要求を求めるために、室内計測用の温湿度センサが必要です。
冷房要求に応じて外気・還気・排気ダンパを制御しています。
外気冷房制御のロジック
さて、ここまでで「外気冷房制御の実行条件」と「外気冷房制御に必要な主な設備条件」について解説してきました。
ここからは、これらの条件をまとめて、外気冷房制御のロジックについて解説していきます。
まず、外気条件が適切な温湿度の範囲に収まっているか、冷房要求があるか、ということを判定します。
これら2つの条件が満たされている場合、外気冷房制御を実行します。
外気冷房制御中は、冷房要求に応じて、外気・還気・排気ダンパの開度を動作させます。
なお、外気・排気ダンパは同じ開度、外気・還気ダンパは逆の開度になります。
そして冷房要求が高いほど、外気ダンパの開度は大きくなり、逆に冷房要求が小さければ、外気ダンパの開度も大きくなります。
しかし外気ダンパの開度が全開となり、それでも冷房要求が小さくならない場合があります。
つまり、外気だけでは室内を十分に冷房する能力がないということです。
その場合は、次第に冷水バルブが開き、冷房を補うことで、室内の冷房要求を満たすという働きをします。

実際の運用での注意点
省エネ効果がある外気冷房制御ですが、設計・運用にはいくつかの留意点があります。
ダンパ開度と実際の風量は比例関係ではない
外気冷房は、室内の冷房要求からダンパ開度を制御しますが、実際にはダンパ開度を制御することで、ダクト内を流れる空気の量、風量を制御しています。
そしてこの風量とダンパ開度は比例関係にありません。
例えば風量10000m3/h の外気ダクトに、外気ダンパが付いています。
外気ダンパの開度が50%だった場合、外気ダクトに流れる風量は半分の5000m3/h ではありません。
これを理解した上で外気冷房制御を実装しなければ、室内を適切な温度に保つことができない可能性があります。
外気ダクトサイズ
外気冷房制御は、外気ダンパ開度を制御することで、外気ダクトを流れる風量を制御していますが、外気ダクトのサイズによっては、外気ダンパ開度をほとんど動作させることができない場合があります。
どういうことかというと、建築の法律で、最小でもどのくらいの外気を室内に供給しなければならない、ということが決まっています。
これはCO2濃度の上昇や臭気を抑え、快適な環境を維持するためです。
そしてダクトを通る風量は、ダクトサイズが大きいほど風量も大きくなります。
つまり、外気ダクトサイズが小さいと、外気ダクト風量が最小外気量に近い値になりますので、外気ダンパで風量を制御しようと思っても、ほとんどダンパ開度を動かすことができない、ということになります。
還気がない
まれに還気がない外調機で外気冷房制御を行おうとしている設計図を見ることがあります。
しかし、外気冷房制御は外気・還気・排気ダンパがなければ、制御することができません。
外気・排気ダンパと還気ダンパは逆の開度になるのは、上記で説明したとおりですが、これは外気・排気風量+還気風量=一定にするためです。
風量バランスを保つためには外気・排気・還気ダンパの3つが必要不可欠となります。
まとめ
外気冷房制御は、比較的導入しやすい手法ながら、適切に設計・運用すれば大きな省エネ効果が見込めます。
また、冷凍機の負荷軽減や設備寿命の延長、快適性の向上といった副次的な効果も期待できます。
空調更新や省エネ施策を検討中の方は、ぜひ一度、外気冷房制御の導入可能性をチェックしてみてはいかがでしょうか?